2004年2月19日

「完全型」って?

今日は(も),午後会社を休んで病院へ.小児循環器科の担当医から,現在の状態(所見)と今後の予定について,説明を受ける.

出産前に,産婦人科の担当医から2回,新生児科の担当医から1回,そして出産後に新生児科の担当医から1回,小児循環器科の担当医から1回と,合計5回にわたって,みっちりと説明を受けてきたことになる.心内膜床欠損症とはどんな状態なのか,それがどのように作用して,どんな症状に陥るのか,それに対してどう治療に取り組んでいくのか,等々.

これだけ何度も説明があるのは,この病院の方針なのか,もしくは,それだけ深刻な病気だということなのか?質問して聞いていないので真相はわからないけど,少なくとも親がこの病気に対してしっかりと理解して取り組んでいかないといけないという事なのだろう.

以下,これまで説明を受けた内容をここでまとめておく.2/13の備忘録で書いた内容に間違いもあったので,その訂正も含めて.(久々に備忘録っぽい内容か?)

完全型の心内膜床欠損症とは?
下記の3点が全て揃っている状態が「完全型」ということ。この内、心室中隔欠損がない状態が「不完全型」となる。

心室中隔欠損
左室と右室の間を隔てる膜が欠損している状態。この為、左室から大動脈に流れるべき血液が右室→肺動脈に流れてしまい、全身に送られるべき酸素を含んだ血液が不足してしまう。なぜ、肺静脈に流れてしまうかというと、全身よりも肺の方が血圧が低いから。
心房中隔(一次中隔)欠損
心房(*1)を左右に分けている膜が欠損している状態。胎児の間は誰でも、心房中隔には卵円孔という穴が開いているのだが、ここでいう中隔はその時点でも既に出来上がっているべきもの。この場合も、肺から送られてきた酸素を含む血液が、左室に送られるべきところを、右房にも流れてしまうという状態になる。
共通房室弁
右房と右室の間には「三尖弁」、左房と左室の間には「僧帽弁」という弁がそれぞれにあって、血液が逆流するのを防いでいる。この弁が左右繋がった一枚になってしまっている状態。弁として機能しなくなって、血液の流れに逆流が生じる可能性がある。

以前の日記で「欠損しているのは、中隔ではなくて」と書いたが、中隔も含めた心臓の中央部が心内膜床であり、そこがゴッソリと無い状態だということのようです。ちなみに、完全型の場合、別名「心房心室中隔欠損」とも呼ぶらしい。

心内膜床欠損するとどうなるか?

出生直後
軽い低酸素血症(ただし、正常な新生児でも多少の低酸素状態であるのが通常)
1ヶ月くらい
本来全身に送られるべき血液が肺に流れ込み、体を流れる血液の量が不足し、肺を流れる血液の量が必要以上に増える為に、うっ血性心不全がおこる。具体的には、呼吸が苦しくなる、手足が冷たくなる、尿が少なくなる、肺拡大といった症状が発生する。


心内膜床欠損の治療はどうするのか?
心臓が小さく、なおかつ体力も少ないという状態では手術ができない(失敗の危険性が高い)ため、手術可能な大きさまで成長を待って、手術をすることになる。大まかには、下記のような手順を踏むことになる。

抗心不全療法(1ヶ月くらいから)
心不全に対する対処を行う。具体的には、利尿剤で尿を出やすくする、血管拡張剤で全身側に血液が流れやすくする。基本的には、一次退院して、家から通院しながらの薬による対処。
カテーテル検査(3?4ヶ月)
心内修復術(後述)が可能かどうか検査をする。1週間程度の検査入院が必要。
根治手術(心内修復術) (6ヶ月)
カテーテル検査で手術可能と診断されたら(心臓が一定以上に成長していること、右室と左室の大きさが極端に異ならない等の条件をクリアしている)、心内膜修復術を施す。心内膜修復術というのは、(1)まず布製のパッチを縫い付けて心房・心室の穴を塞ぎ、(2)次に一枚になっている房室弁を左右に分けて、弁として機能するように形成する(弁形成術)という手順を行う。ここで難しいのは、(1)パッチを正確に縫い付けないと、左右の心室・心房のサイズが偏ってしまう、(2)弁逆流が起こらないように弁として機能するよう形成しなければいけないという点。成功率が格段に向上したとはいえ、難手術であることに変わりはない。失敗した場合は、成功するまで何度も再手術をする必要があるし、最悪、生身の弁は取り除いて人工弁を入れなければいけなくなる可能性もある。
肺動脈こうやく術
薬剤による抗心不全療法に効果がなかったり、カテーテル検査で手術不可となった場合は、根治手術の前に一時的な対処を手術で行い、根治手術が可能な体力が付くまでの繋ぎにする。この為、「姑息手術」とも呼ばれる(この呼び方はなんだかなぁ)。手術は、肺動脈をワッカのようなもので縛って、太さを絞るというもの。バウンディング手術という。肺動脈を細く、血液が流れにくくすることで、その分体の方へ血液が流れやすくなり、結果として心不全が軽減されるというもの。バウンディング手術の後、6ヶ月?1年で根治手術を行う。

以上は、順調に進んだ場合の流れで、他の合併症があったり、思うように発育しなかったり、弁逆流が多かったりすれば、また違った、おそらくより長期戦な治療が必要になるかもしれない。

龍生の現在の状態は?
病名:

  • 完全型心内膜床欠損

    • 弁逆流軽度

    • 肺動脈狭窄なし

    • 大動脈狭窄なし


  • 下大静脈欠損

  • 心室やや小さい



あれ?そうなんです。出生直後の所見から病名が増えています。

下大静脈欠損はあっても、別の流れから静脈に戻るようになっているので、現状問題はないけと、心内膜床欠損と組み合わせとなると、多脾症候群の可能性が高いので、CT等の検査をしてみるとのこと。

心室がやや小さいのは、まだ問題のないレベルだけど、このままサイズのアンバランスさが大きくなれば、当然根治手術ができるようになるまでの期間が余計にかかるということになる。

*1: ちなみに、心房はタンク、心室はポンプの役割を持つ

(⇒hatena)

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